ハルジョオンはなかった
どんなところを 探検した自転車だろう 車輪にからまって 干からびた ハルジョオン 幼い頃からハルジョオンと呼んでいた花は、実はハルジオン(春紫苑)だった。とは、今回の歌集で校正が入って初めて知る。ちなみに似た花は、ヒメジョオン(姫女苑)である。まったくまどろこしい。 ずっとハルジョオンだと思って生きてきた私には衝撃だった。まあ、間違えて覚えていただけのことなのだけど。 たかだか jo と ji のちがいなんだけど、私には大きな違いで、たんぽぽはたんぼぼだよと言われたみたいに、かなしい。や、たんぽぽはたんぽぽだけど。 そういえば、幼いころ憶えた草花の名は、ぜんぶ音でおぼえ、ひらがなやカタカナで書いた。つくしも、おおいぬのふぐりも、たんぽぽも、おおばこも、ぺんぺん草も(草は漢字か)…ハルジョオンも、ヒメジョオンも。草花が身近で、よくそれらで遊んでいたころだ。 それらに漢字があると知ったり、ぺんぺん草はナズナだと知るころには、もうそれらとは遊ばなくなっていた。 ないものはない。というわけで、改作。 正しさがすべてではないけれど。 どんなところを 探検した自転車だろう 車輪にからまって 干からびた ヒメジョオン ハルジオンという名は私の内側からは出ない。だから、咲く時期は多少異なるが、同じく身近にあったヒメジョオンにする。 ペンペン草をみて、私は「あ、ナズナだ」とは言わない。同じように、その花を見て「ハルジオンだ」とは言えないだろう。ましてや貧乏草とも。 そういえば、この呼び名をつかう大人が昔はとても嫌いだったことを、ついでに思い出した。なんだかとても下品に感じていやでたまらなかった。 これだけの決断に、だいぶ時間を要した。 なんとも贅沢なお悩みではある。